今年もまた、「干支と縁起物」の季節がやって来ました。来年の干支は未。羊というとムクムクした感じの毛糸やセーターのイメージがあって、どうも日本的な動物…という感じがしません。想像していた通り、集まってきた作品も何となく現代的で、例年とは違った雰囲気の干支展となりました。
　また、可愛らしい絵柄が多いのも今回の作品展の特徴のひとつです。フワフワした毛皮、つぶらな瞳、仲良く群がる羊たち、そして緑の草原…。羊は十二支の中でもとりわけ優しく、穏やかな動物という印象があるのでしょう。
　慌ただしい事が多い年末ではありますが、ひとときの間、羊さんたちと、のどかであたたかい時間を過ごして頂ければ幸いです。

　「因州和紙を見に来ませんか？」
　知人からの連絡があり、鳥取を訪れたのは昨年の春でした。青谷と佐治の里を訪れ、紙漉き体験に参加し、紙を漉いている方にお話を伺いました。実際にその土地の空気を吸い、水の音を聞き、紙に触れたことは鮮烈な印象となって私の中に残っています。
　東京に帰って来てから剪画に向きそうな因州和紙を少しずつ買い集め、作家さんたちに見て頂きました。見知らぬ素材との出会いに、作り手は常に目を輝かせます。その柔らかな風合いや、むら染めの微妙な色合いなど、それぞれに気に入った紙を見つけ、構想をふくらませて下さったようです。
　鳥取から帰って一年が過ぎ、ようやく作品がまとまってここに発表することができました。因州和紙を使って制作された剪画作品たち…。しかし、まだまだ始まりの段階であるような気がします。これからも美しい和紙にインスパイアされた剪画作家の手によって、さらに新しい作品が生み出されてゆくことでしょう。
　皆様の忌憚なきご意見をお待ちしております。
 

　今回はレーザーでカッティングするカードを意識して、作家さんたちに作品を作って頂きました。データ用に加工するためにモノトーンの図柄を制作。さらに必要に応じてそれらの作品を展示用に彩色しています。
　データ化した図柄の方は、レーザーカッターで切り抜き、グリーティングカードを作成。この技術を用いることによって、今まで手で切り抜いて作っていたオリジナル作品を複製して身近に楽しんで頂くことができるようになりました。
　テクノロジーの発展によって機械でも気軽に紙を切ることができるようになってくると、作品のアイディア自体や、図案の構成力・描写力が重要になってきます。作家の手先の技術ではなく、発想力とオリジナリティが作品の質を決めることになるのです。
　どんなデザインがレーザーカッターとの相性が良いのか…レーザーならではの剪画はどんな風に作るのか…まだまだ実験中ではありますが、剪画の可能性を広げる一つの方法として、これから新しい技術にも取り組んでゆきたいと考えています。
　是非とも皆様の率直なご意見、ご感想をお寄せ下さい。
 

春はあけぼの
やうやうしろくなりゆく山ぎは、すこしあかりて、
紫だちたる雲のほそくたなびきたる...
誰もが知っている清少納言の枕草子の冒頭です。今回は春をテーマに...と思い、この書き出しをタイトルとしました。作品は必ずしも春の朝を描く必要はありません。が、多くの作家さんがこのテーマを聞いた時、ピンクや明るいオレンジ色...春の朝の空の色を思い描いたようです。枕草子の文章は、日本人の色彩感覚に強く訴える響きがあるのだと思います。
今回の展示ではそうした色彩感にあふれる作品が揃いました。明るく、華やかで、新しい芽生えを感じさせる...。冷たい風を含みながらも少しずつ温もりゆく春の空気と共に、この作品展をお楽しみ頂ければ幸いです。